黒猫の気ままに
「…着きましたぜ。どうでぃ、立派な家だろぃ?」
雪が言うので、黒はその家を上から下まで眺める。
「僕んちとちょっと似てる。」
「そうだろうねぃ。お前さん見るからに家猫でしたって感じだし。」
雪は黒を中へ案内する。
「ここは昔人間が住んでたんでさぁ。今はいないから俺んち。」
「ふーん。」
黒は家の中を見て回る。
置きっぱなしのソファーに雪が座るので、黒も隣に座った。
「ねぇところで、雪って飼い主さんとかいないの?」
「なんでぃそりゃ。俺ぁ昔からずっと一匹ですぜ。」
「そ…なんだ。」
そんなもんなのかな…。
雪、しろなのに?
「ねぇ、なんで、雪はしろなのに飼い主さんいないの?」
「はぁ?お前さん、言ってる意味が分かんないですぜ。」
う、ん…?
「…僕ね、飼い主さんに、くろだからって捨てられたんだ。兄弟たちはみんなしろで、僕だけくろだったんだ。」