第六魔法学校の紅と碧
「ーーなんてな!」
茜はガバリと身体を起こし、敵の間を器用にすり抜けベンチの上から脱出した。
「だーれがお前らのウマイ飯になんかなってやるかよ。あたしはまだ死ぬわけにゃいかねーんだ」
何故なら茜は、初恋もまだなのだ。
こんなところでよくわからないモンスターに食われて生涯を閉じるには、あまりに若すぎる。
きっと、茜にもいるはずなのだ。
茜を助けてくれる、少女漫画のヒーローのような存在が。
「じゃーな、おととい来やがれっ」
茜はスマホをスカートのポケットに収めると、駆け出した。瞬く間に公園を出ると、人通りの少ない道路を横に突っ切って向かいの建物へ。
ドス黒い空気を撒き散らしながら、奴らが後を追ってくる。茜はきょろきょろと周囲を見回し人がいないことを確認すると、バネのように足を曲げ、勢いよく飛び上がった。
そして建物の三階の位置にある室外機の上に着地すると、もう一度飛び上がって屋上へ。
猫のような速さであっという間に屋上の端まで走ると、そのままの勢いで難なく隣のビルへ飛び移った。
その際にチラと下を見ると、彼らはウジャウジャと地面に生えたまま、一つ眼で茜を見上げていた。上がってこれないらしい。