奇聞録九巡目
日常の恐怖。
九巡十話。
あのトンネルは出るそうだ。
そう。幽霊。
さっき車で中に止まってクラクションを一回鳴らす。
ピーッ・・・。
そうすると何かが出てくるらしい。
だが何も起きない。
結局トンネルを抜けて帰ることにした。
仲間は口々に、
「トンネルの上に白い影が出た。」
とか、
「子供がヘッドライトを横切った。」
とか、
言っていた。
まあ、彼等には何も解らない。
何せ、トンネルに入る前から俺の膝に、異形な子供が座っていたんだから。
俺を見ながら、「ミンナバカダネ。ココニイルノニ・・・。」と、楽しそうに俺に向かって話していた。
消えないんだ、この子供。
皆は勝手に怖がっているけど、見えていないんだな。
きっと。