奇聞録九巡目



夜中に車で、繁華街を抜けて住宅地に差し掛かった頃、ふと異変に気づいた。



信号待ちのたびに黒いカッパを着た男が立っている事に。



「雨も降っていないのになんだろうな・・・。」


その程度でしかなかった。



しかし、何故今になって黒いカッパを着た男に気が付いたのか?



心なしか近付いている気がする。



割合信号が多い道なのであのカッパを着た男がはっきり解るようになった。



所々、ペンキでも付いたように色が見える。



近付いて来ているな・・・。



明らかに雰囲気が違う。

生きていないな・・・。



ついに幾つかの信号機でカッパを着た男が車の隣に立った。


ペンキに見えたのは、血液だった・・・。



ハンマーを降り下ろし、運転席の窓を割る。



ガラス片が体に掛かる。


カッパの腕が俺を掴む。


引きずり下ろされてハンマーで滅多打ちにされた・・・。



返り血が黒いカッパを染めていた。




繁華街を抜けて住宅地に差し掛かった頃に、ふと異変に気づいた。



黒いカッパを着た男が立っている事に。





ああ、何度繰り返されるんだ・・・。



俺はきっと死んでいる。ハンマーで滅多打ちにされて。



だけど死んだ事を忘れて何度も繰り返している。



いつまで続く?


笑えないな・・・。



< 2 / 10 >

この作品をシェア

pagetop