鬼社長のお気に入り!?
「八神さん……」


 本当は心の綺麗な人なのに、暗闇の中でひとりで苦しんでるんだ。私が何とかして助けられるならなんとかしたい。けれど、何ができる? あまりにも無力すぎるよ――。


「私、八神さんのデザインした商品好きです。この前エクラルに行った時見ましたよ、新作の間接照明、ものすごく綺麗でした……」


「杉野……?」


「でも、八神さんの作品は全部憎しみの中から生まれたものだって聞いてがっかりです」


「なんだって?」


 八神さんが私を鋭く睨む。それでも私は怯まなかった。


「八神さんのこと、カリスマデザイナーだって憧れを持ってる人たくさんいるんですよ? 表向きは綺麗だけど……実は八神さんの恨みつらみがこもった製品だって知ったら失望しますよ。気持ちのこもってないものなんてデザインとは言えません。そんなの偽りです」


 私がそう言うと八神さんは驚いた顔をしてしばらく口を閉ざしていた。すると、今まで険しい表情をしていた八神さんがふっと笑った。
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