鬼社長のお気に入り!?
「は、はい! 私でよければ……」


「食事代は俺のカードを加奈子にあずけてあるから、好きなもんでも食ってこい」


「八神さんは……?」


「仕事」


 そっか、八神さんが仕事なのに自分だけ出かけるのはなんだか後ろめたい。しかも八神さんのカードで食事なんて恐れ多すぎる。


「あぁ、あとこれ。お前の傘だろ? 加奈子から預かってきた」


「わざわざすみません、別に返さなくてもいいのに……ありがとうございます」


 先日、加奈子さんが八神さんの自宅前で雨に濡れているのを見かねて渡した傘だった。安物だったし、別に返ってこなくてもいいと思っていた。


「俺の気が変わらないうちに早めに仕事片付けて行ってこい」


「わかりました」


 突然訪れた加奈子さんとのデートにドキドキと胸打ちながら、私は仕事を早めに終わらせて出かけるようにした。
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