鬼社長のお気に入り!?
 加奈子さんが前もって予約を入れてくれたところは個室の完備された天ぷらの店だった。エントランスから高級感が漂っていて、本当にこの店に入っていいものなのか躊躇してしまった。


「蓮ちゃんから聞いたでしょ? 私、アメリカ暮らしが長いから、日本に来たときは絶対にこの店に来るの、ずっと前に蓮ちゃんに連れてきてもらってね、それからお気に入りの店になっちゃって」


 れ、蓮ちゃん……?


 私がきょとんとしていると、加奈子さんはあはは、と笑って言った。


「ごめんね、私兄さんのこと“蓮ちゃん”って呼んでるのよ、小さい頃に“蓮司兄さん”ってなかなか呼べなくて、それがなまって蓮ちゃんになっちゃったわけ、あぁ、あと最初に会った時と印象が違うって思ってる? これね、蓮ちゃんが「初対面の人と目上の人と会う時はよそ行きの顔をしなさい」って言われてきてたから癖みたいになっちゃって……こういうのショセイジュツ? って言うのかな?」


 な、なんか間違ってるよーな、間違ってないよーな……とにかくよく喋るなこの子――。
< 286 / 367 >

この作品をシェア

pagetop