鬼社長のお気に入り!?
　それにしても思ったよりすごい人だ。経営が思わしくない桐生電機の起死回生をこの目で見ようとたくさんの人が集まっているのだ。


　美智のところへ戻ると、美智はなにやら誰かと電話をしているようだった。


「ええっ!?　いまさら？　困るよ～どうすんのよ、え？　ち、ちょっと!!　私は風邪気味だし、業者とだって――もう！」


　一方的に電話を切られたのか、美智が頬を膨らませながらスマホをバッグに押し込んだ。


「どうしたの？　なにか問題起きた？」


「う、うん……ちょっとね」


　美智は困惑したようになにか考え事を巡らせていた。こんな表情をする時はたいてい本当に困ったことが起きた時だ。


「なにかあったんだね？　どうしたの？」


「それが……イメージマスコットの着ぐるみを着る予定だったバイトの子が急に来れなくなっちゃったらしくてさ、私に代わりにやれって言うんだよ」


　イメージキャラクターって、あのクマのキリコちゃんか……。


　桐生電機のホームページを見たときに目がくりくりしてずんぐりした体型が頭にぽっと浮かんだ。
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