鬼社長のお気に入り!?
「あの時はお世話になりました。お礼にというか再会を祝して一杯奢らせてください」


「え? でもそんな……」


「これも男の甲斐性ですから」


 爽やかににこりと笑うとふわりと大人なフレグランスの香りが鼻を掠め、私は一瞬でとろんと催眠術にかかったかのようになってしまった。


 それから話をしていると、彼も同じ商品をデザインするデザイナーであることがわかった。同じ業種だったということもあって話も弾み、つい私が今の会社を辞めてしまったこともポロリと喋ってしまった。


「そうだったんですか、大変でしたね……でもどうしてデザイナーになろうと思ったんですか?」


「私、昔からものを作るのが好きだったんですけど、自分がデザインしてそれが形になった時、初めて自分で作ったものなんだって思うと嬉しくて……もっと世の中の人に喜んでもらえたらって思って……って、自分の価値観を他人に押し付けるみたいなエゴな動機ですよね」


「いえ、そんなことないですよ、だいたいクリエーターのやりがいってそんな感じじゃないですか、いいと思いますよ」


 それからジェントルマンさんは私の話しを親身になって聞いてくれた。だから私も調子に乗ってペラペラと話してしまう。これも彼のテクニックなのだろうか。
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