それでもまた恋をする
記憶
「あと一週間だね」

そう言いながら俺の腕に自分の腕を絡ませて、覗き込むように俺の顔を見て嬉しそうに微笑む翔子。

「遅刻すんじゃねーぞ?」

そう言う俺の顔もきっと締まりの顔をしているだろう。

付き合ってまだ一年。

俺達は一週間後結婚する。

理由は一つ。

翔子のお腹に新しい命が宿ったからだ。

もちろん親には反対されるし、翔子の親父には殴られおばさんには泣かれ大変だった。

二人とも22歳という事で早すぎると言われた。

それでも二人で皆を説得して、翔子のお腹が大きくなる前に結婚式を挙げようとなったのだ。

「えっと、明日は一時にいつものところだっけ?」

鞄からスマホを取り出し操作する翔子。

「そっ。独身最後のデート」

「ふふっ。どこ行くのかは…」

「その日までのお楽しみ」

「はいはい。じゃあ、また明日ね?」

いつの間にか翔子の家に着き、俺達はそこで別れた。

数歩歩いたところで。

「じゅーん」

いつものように翔子が俺を呼び止める。

「ん?」

振り向くと、そこには綺麗に笑う翔子がいて。

「だーいすき!」

そう叫ぶ。

「ばーか。俺もだよ」

「明日ね!」

嬉しそうに笑って手を振る。

俺もそれに返してまた歩き出した。


< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop