それでもまた恋をする
病院内で走ってはいけないとは分かってはいるが、少しでも早く翔子の元へ行きたくて看護師の注意など無視した。

手術室の前でおじさんと、おじさんに抱き付く形で泣き崩れるおばさんの姿。

「おじさん!おばさん!」

俺の声に気付きおじさんがこっちを見る。

「淳君…」

いつもと違い力無いおじさんの声。

「一体何があったんですか!?」

「…警察が言うには、横断歩道を渡っていた翔子に、信号無視の車が突っ込んだらしい」

「…」

車が…突っ込んだ?

頭の中が真っ白になり言葉も出てこない。

それでも時間が経つと頭に浮かぶのは自分を責める事ばかり。

何で待ち合わせなんかしたんだろう…

何で迎えに行かなかったんだろう…

そもそも今日じゃなく明日にすれば…

「淳君、君がそんなんでどうする!」

おじさんの声にハッと顔を上げる。

よほど生気の無い顔でもしていたんだろう。

おじさんのそんな言葉に目が覚める。

そうだ。

こんな時だからこそ俺がしっかりしなくては。

「俺、一回家に戻って必要な物とか持ってきます。すいませんが、何が必要か後でメール送ってください」

頭を下げると俺は家へと戻った。

この時俺は、まだ軽く考えていた。

すぐにまたあの笑顔で「じゅーん」と言いながら俺に抱き付く翔子に会えると…



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