1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 物陰からこっそりと様子を窺い、残り1分を切ったところで動き出す。

 私は時間ピッタリに現れます。

とりあえず、男の背後に回り込む。
 男はすぐに私に気づいたようで、視線だけを私に向けてくる。

「…情報屋か」

『あぁ、場所を移すぞ。ここは人が多すぎる』

「…いや、ここでいい」

 はい?何言ってるんですかね。

 視線だけを相手に向ける。
 男は携帯をおもむろに操作すると、画面を暗くさせて携帯をポケットにしまう。

 まさか、正面向いて堂々と話すつもりですか!?


 …いや、違う。

 男は体ごと私に向き直ると、ふっと笑みを浮かべる。その笑みに、背筋が凍り付いたのを自覚する。

 まずい、この男は危険だ!!

 後ずさりした私の足に何かが当たる。
 振り返ろうとする前に、突然両手を取られ、口を塞がれる。
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