1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 駅をだいぶ離れて、人気がなくなっていく。

 まずい。
 男の言う車はあの真っ黒なワンボックスカー。
 近づいてくる男たちに気づいて、運転席と後部座席から数人の男が顔を出す。

「こいつか、情報屋は」

「えぇ、取引の時間ピッタリに現れました。それに、本人も認めています」

 ちょっと読み間違えたようです。

 タンクトップの男はおそらく下っ端のまとめ役というべきでしょう。
 本当のトップは後部座席から出てきたこの金髪の男。

 どうする、どうやって逃げる…。


 金髪の男がフードに手を伸ばす。

 素顔だけは見られるわけにはいきませんッ。

「ッ!?いってぇ!!?」

 すみませんね。正当防衛です。

 口を塞いでいた男の手を思いっきり噛んでやりました。同時に両手の拘束がゆるくなる。
 背後にいた男にひじ打ちをして、フードに手を伸ばしてきた男の手を逃れる。

「逃がすな!!」

 一斉に男たちが逃げ道を塞ぐ。
 でも、おとなしく捕まるわけにはいかないんですッ。
< 102 / 313 >

この作品をシェア

pagetop