1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「この、野郎!!」

「ッ!!?」

 背後から殺気。目の前からも2人来ている。動きが早いのは、背後。

 背後から迫ってきた人の腕を掴み、向かってきた勢いに乗せて、前から来る2人に向かって男の体を押す。

 見事、総崩れです。

 喜んでいる場合ではなく、更に向かってきた男の脇腹に思いっきり蹴りをいれる。

 もう、怪我させるとか考えてる場合じゃないです。
 とにかく、捕まるわけには…。


 不意に、間隣から強烈な殺気。


 え、今までそこに気配なんか…。


 そちらを向こうとした、先に視線が動いて見えたのは、自分に迫ってくる拳。

 はっと我に返った時、私は既に地面に叩きつけられていて、殴られた左の頬がジンジンする。口の中が切れたのか、鉄の味で気持ち悪い。

「総長…」

「こんな奴に時間かけてんじゃねぇ」

 総長と呼ばれたのは、やはり金髪の男。
 口の端からしたった血を拭う。

 起き上がろうと足に力を込めた途端、それを阻止するように、背を思いっきり踏まれ、地面に抑えつけられる。
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