1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「ぐあっ」

 立ち上がらされ、もうだめだと思ったその時、突然男たちの仲間の1人が倒れる。何事かと全員の視線がそちらに向いた。

 男を倒したのは少年で、少年はまっすぐに総長の男を睨む。

「なんだてめぇ」

「…そいつの手、離せよ」

「あぁ?」

「離さねぇなら…」

 少年の動きは早い。

 あっという間に殴りかかってきた男2人を殴り倒した。
 少年の強さに、男たちは一瞬怯んだが、それも一瞬のこと。一斉に少年に殴りかかっていく。

 だが、少年はいっさいひるまずに向かってくる男たちを倒していく。

 総長の男が舌打ちする。そうだ、こんなチャンス無駄にしたらダメだ!!

 無防備な総長の足を思いっきり踏んづける。

 怯んだすきに拘束を逃れるものの、体がふらふらする。
 とりあえずフードを被り直して、走り出す。

 だが、走り出した手はすぐに誰かに掴まれた。
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