1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
「昨日の時点で気づいてたから、別に驚きはしなかった。あんたの素顔見損なったのは残念だけどね」
「は!?」
昨日?なぜですか。
昨日はしっかり変声機も作動していたはずです!
なのに、なんで昨日分かるんですか。
「…腕、細かったし、なんか走り方女っぽかったから」
「たったそれだけで…?」
「それだけって、充分だろ?…それで、俺のことは信用してくれた?」
神野くんの言葉に、体が震える。
信用…確かに助けてくれた。神野くんが来てくれなかったら、私は今頃…。
何も答えない私に、神野くんは苦笑を浮かべると、やっぱまだ無理かと諦めたように言う。
神野くんはどうして私に執着するんでしょう。
晴野蓬としても、情報屋としても…。
仲間なんか、いらない。
…でも、今日みたいなことがあったら、私は自分の身を守れるだろうか…。