1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「…じゃあな。俺諦めねぇから、あんたに絶対認めさせるから」

「あ、待って!」

 思わず呼び止めると、神野くんは、足を止めて振り返る。


 顔を見せる勇気はない。
 だけど、それでもいいなら…。


「顔は見せれない。…でも、あなたがいいというなら、取引の時近くに居てくれないか」

「…それは、どういう意味?」

「…今日みたいなことがあった時、私は1人で逃げ切る自信がない。だからと言って、相手を倒せない」

「…つまり、ボディーガードとして傍に置こうってこと?」

 神野くんの言葉に、何も言い返せません。要はそう言うことです。


 馬鹿げてる。そんな勝手な理由で、私は神野くんを縛ろうとしている。

 そんなの、勝手すぎます。



「…いいよ。あんたに飼われるなら、いいよ」

< 110 / 313 >

この作品をシェア

pagetop