1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 剣人さんはすぐに診察室の1つを借りて、お父さんは私をそこのベッドに降ろす。

 看護師さんに温かいタオルと前開きのパジャマを渡されて、カーテンが引かれる。

「着替えてくださいね。着替え終ったら教えてください」

 言われた通り、服を脱ぎはじめる。

 うわぁ、すごい痣…。
 お腹にも足にも腕にもあちこちに痣があった。
 でも、一番酷いのはやっぱり頬の傷。出血は何とか止まったけど、1番ズキズキする。

 痛む体を何とか動かして着替え終わると、カーテンが開けられる。

「よも、傷見てもいいか」

「はい…」

 剣人さんにベッドに横になるように言われ、言われた通りに寝転がる。

 はじめに頬の傷に触れられ、体が勝手に跳ねる。すぐに手は引っ込められたけど、もう一度触れられる。
 指の感触1つ1つが痛みを引き起こして、涙が出そうになるのを必死に堪える。

「…よも、体見るよ?」

 頷くと、ひもをとられ、体の傷が露わになる。
 看護師さんが隠してくれるところは隠してくれたけど、見えているお腹だけでも真っ青だ。

 剣人さんもお父さんも目を見開いて、少しだけ触られる。頬よりは痛くないけど、やっぱり痛いものは痛い。

 痛みに耐えていると、お父さんが気付いて手を握ってくれました。
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