1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「…精密検査準備して。清牙、今日1日預かる」

「あぁ、頼む。でも、この傷大丈夫なのか」

「わからないけど、頬の傷は骨までいってるかもしれない。大丈夫だ。傷ひとつ残しやしない」

 剣人さんはそう自信たっぷりに言うと、頭を撫でてくれました。

 看護師さんの手で服は直されて、やって来た担架で運ばれます。

 普通に…は無理ですが歩けないこともないんですが…。

 そう言うと、剣人さんは苦笑を浮かべていましたが…。

 その後、MRIなどをとって、頬の傷以外はただの打撲程度で済んでいたことが分かりました。
 頬は骨には何とか異常はなかったものの、やはりひどいらしく、入念に薬を塗られて特大のガーゼで覆われました。

「剣人、よものこと頼んだぞ」

「分かってる。よも、鎮痛剤打つから。今日は大人しく寝てような」

 一般病棟の一角に私は運び込まれました。今日はここで入院するそうです。
 点滴が鎮痛剤という事でしょうか。

 お父さんは心配そうに私を見つめていたましたが、大丈夫だよと微笑むと何度も振り返りながら帰っていきました。
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