1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 剣人さんは看護師さんたちを下がらせると、自分はベッド脇の椅子に腰かけました。

「よも、これは情報屋の仕事中に?」

「はい。取引に行ったら何人かに囲まれて、抵抗した時に…」

「よく、逃げれたな」

「男の子が助けてくれたんです。その子がいなかったら、多分捕まってました」

「…よもが無事に…無事じゃないけど、帰って来れて良かったよ。清牙がまた暴れるかと思った」

 剣人さんの苦笑には笑えません。

 私は中学生の時、監禁された。
 その時、私は身も心も何もかもがボロボロで、救出されてからもしばらく立ち直れなかった。

 お父さんはそんな私を見て、私を監禁した暴走族グループのリーダーの子を殴り飛ばしてしまったんです。しかも、警察の見ている目の前で。

 父親の心情を察せられてなんとかおとがめが無かったものの、普通なら逮捕されてもおかしくなかったんです。

 だから、それ以来お父さんにはいじめられても絶対に言えませんでした。
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