1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「晴野!?」

 う、早速すぎます。

 振り返れば、当然のように神野くん。
 私がいることにものすごくびっくりしているようです。

「お前、1週間もなんでやす…その湿布なんだよ」

「何でもありません」

「嘘つくな!おい、晴野!!」

 歩くスピードを速めても神野くんは追いかけて来る。

 学校の敷地内に入ると、私を追いかける神野くんに一部女子から奇声が上がったものの、それはすぐに止んで影口になる。

 だから嫌なんです。人気者と関わるのは…。

「おい、晴野!」

 もう、話しかけてこないでよ…。
 大勢の人からの視線が怖い。速く教室に行きたい。

 その一心で歩いていると、思いっきり誰かにぶつかってしまいました。

「ご、ごめんなさい」

「蓬?」

 う、私はつくづく運がないんですね。

 顔を上げれば朔夜さんが驚いたように目を見開く。
 朔夜さんの後ろにいた輝星さんや渉さんも私の頬にある湿布に気が付いて目を見開いている。

「…大丈夫ですか?」

「…すみませんでした」

 他人を装って手を貸してくれた渉さんを断って自分で立ち上がる。

 朔夜さんの視線が痛い。
 きっと、周りに人がいなければ休んでいた理由と頬の湿布のことを問い詰められる。
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