1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 早く離れなきゃ、周りの女子たちの暴言がここまで聞こえてくる。

「本当にすみませんでした」

「…昼休み、絶対に来い」

 どこにとは言わなくてもわかる。

 耳元で言われた言葉に首を横に振ろうとしたけど、朔夜さんの視線に耐えきれずに頷いた。

 そこから逃げるように教室まで行くと、自分の席について、机に伏せる。

 最悪だ。
 目立ちたくなんかないのに、朝からすごい目立ってしまった。

 後から遅れて入ってきた神野くんは、隣の席に座ってからじっと私を見つめてきている。
 でも、それを気づかないふりして机に伏せ続けた。

 その時、ガタンと大きな音を立てて誰かが入ってきた。
 その途端に奇声が上がったから見なくたって誰だかわかる。

「雷斗くんどうしたの?」

「え?いや…何でもない」

 歯切れの悪い声が聞こえる。
 雷斗くんの視線を感じる。


 もうやだ、放っておいてください。

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