1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 しばらくすると、チャイムが鳴って、担任が入ってくる。

 タイミングがなくて雷斗くんは結局話しかけてこなかった。それはお隣の神野くんも同じ。

 先生は出席確認をしながらクラス全体を見回していたのに、私を見て安心したように笑ったかと思ったら2度見された。
 その視線は間違いなく、この大きな湿布のせい。

「晴野、どうした。1週間も無断欠席なんて」

 全体で聞くんですか…。

「…すみません。風邪引いちゃって」

「その湿布は?」

「…ベッドから落っこちました」

「…そ、そうか」

 信じてくれたんでしょうか。まぁ、信じてないでしょうけど…。

 担任はそれ以上聞いてくることはなく、HRは終わる。
 HRが終わると、先生はすぐに席の前に来て、声を潜める。

「本当に、何があったんだ?」

「何でもありません」

「…親ともめたのか?」

「ッ!?お父さんとお母さんを悪く言わないでください!!」

「ッ!?いや、すまん。そう言うつもりではなくて、両親ではないんだね?」

「違います。そんなことするわけないじゃないですか」

「そ、そうか。悪かった。…何かあったら言うんだぞ」

 先生は気まずくなったようにそそくさと教室を出て行きました。

 先生に言って何になるんですか。
 どうせ生徒指導に当たって叱られるのが落ちです。

 学校、来なきゃよかった…。
 お母さんの言う通りだ。ちゃんと治ってから来ればよかった。
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