1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
3.過去
痛み
「…神野くんが、おひさまの家の出身だったなんて…」
家に戻った私は、自分の部屋にこもり、施設長さんから預かってきた貴重な彼の写った集合写真を見つめていた。
少しだけ笑みを浮かべた彼。
この写真が最後の写真だそうです。
施設長さんは神野くんの生い立ちを聞かせてくれようとしましたが、それを丁重にお断りして退出してきました。
これは、勝手に聞いていいものではないと判断したから。
神野くんは優しくて、明るいから勝手にとてもいい家族がいるんだと思っていた。
実際は、たった1人で生活しているというのに…。
でも、これで神野くんが情報屋に固執する理由が分かりました。
でも、情報屋として、1か月近く音信不通です。
私からメールしない限り、神野くんは情報屋に催促する気はないようです。
そういえば、情報屋として動いていない。
今日、アドレスを変えて施設長さんに託してきたものの、前のメールアドレスで寄せられた依頼は10。
一部は危険なにおいがしたので即刻削除。残ったのは3つです。
そのうちの1つに返事を送り、依頼内容を聞く。
比較的すぐに返ってきた。依頼内容は不良子どもの素行調査。探偵にお願いしてくださいとも言えずに依頼を引き受ける。
すると、いくつかの写真が送られてきた。顔はこれなのですね。