1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 4人に手を振って、夜の色に染まっていく街に身を隠す。

 駅が近づくにつれて増える人。
 フードを深くかぶり、時計塔の下を見れば、ジャージ姿の神野くんがいました。

 顔、隠す気なさそうです。

 神野くんは私を探す意思はないようで、ポケットに手を突っ込んでボケ~ッとしてますね。
 そんな彼の背後に行くと、神野くんは視線だけを私に向けてきました。

「っよ」

「こんばんは」

「堅苦しい奴だな」

「会って3度目でそんな馴れ馴れしいのもな」

「いいだろ別に。俺にとってはお前は3度目じゃねぇし」

 それは私にとっても同じですよ。

 とはいえず、とりあえず歩き出します。
 神野くんは何も言わずにさりげなく後をついて来る。
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