1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
納得しない神野くんを強引に連れて、路地を出る。
繁華街から離れ、あの公園まで無言で歩く。
「なぁ、ハル。なんで…」
「情報屋をする上で、私にも約束がある。薬が関わっていることが分かったら依頼内容に関係なく、警察に引き渡すこと。危険なことからは身を引くこと」
「…そっか」
「万能じゃないんだ。分かってくれ。それに、あのまま監視を続けて見つかってみろ。2人とも薬に侵される」
神野くんの言いたいことも分かる。
自分たちの手であの少年たちを薬から引き離してやりたい。でも、そんなこと無理だ。
自分の身を守るためにも…。
神野くんは辛いなと苦笑を浮かべ、空を仰ぐ。
その顔は寂しそうで、ふと施設長さんの顔を思い出す。
「…顔を見せに行かないのか」