1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 神野くんはやって来た女の子を睨みつけると、私の手を更に強く握りました。痛いです…。

「お前が晴野の引いた席行けよ。くせぇやつが隣とか吐き気がする」

「え?」

 神野くんの暴言に女の子は呆然です。ついでに私も呆然です。

 神野くんそれは悪口ではないでしょうか…。

 徐々に理解した女の子は私を睨みつけると私の持っていた紙を奪い取って、本来なら私が行くべき席に座りました。
 そして、私は神野くんに元からいた席に座らされてしまいました。

 …どうして…?

「神野くん?」

「晴野が隣にいねぇとつまんねぇ」

 ちょこっとだけ拗ねているみたいです。
 神野くんはそっぽを向いていますが、わずかに見える頬は少しだけ赤い。

 本当にどうしちゃったんでしょうね…?

「晴野さん」

 ビクッてしました!?振り返れば雷斗くんがそこに…。へ?

「…後ろではないんですか」

「晴野さんが心配だから。それに、神野の監視も兼ねて」

「あ?」

 ニコニコと笑っているはずの雷斗くんの目が笑っていません。どこからかブラックオーラが漂っています。
 神野くんも思いっきり雷斗くん睨んでますね…。

 そんなわけで終了した席替えは相変わらずほとんど変わることがなく、また1か月過ごしていくのです。
< 158 / 313 >

この作品をシェア

pagetop