1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
「晴野?」
「…ごめんなさい。私…」
「…俺は、晴野が嵐鬼に入ってようが、入ってなかろうがどうでもいい。…晴野、お前嵐鬼の誰かの女なの?」
「ッ!?違います!私は誰ともお付き合いしていません。それに、嵐鬼は…ッ」
急に声が詰まって出なくなる。
これは自己防衛。いつも口走りそうになった時に必ずそれ以上は言わなくなる。
分かってる。
でも、神野くんにでさえ、私は言うことが出来ないのですか…。
「…晴野、俺の話聞いてくれないか」
「え?」
「嫌なら途中で逃げてもいい。だから、ちょっとした昔話、聞いてくんない?」
そう言いながら、神野くんは図書館の机に腰を降ろしてしまいました。行儀悪いです。
座れば?という神野くんに1番近くにあった椅子を引き寄せて座りました。
神野くんは私が座るのを見て笑うと、突然表情を歪めて上を向いてしまいました。
「俺、親いねぇんだ」