1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「秋空くんは強い子だね」

「…ぼく」

「ん?」

「…おかあさんいないの、おとうさんもどこかいっちゃった」

「うん」

「ぼく、へんなこじゃない。だって、おかあさんはぼくをまもってくれたもん。おかあさんは、だいすきって言ってくれたもん!」

「先生も秋空くんのこと、大好きだよ」

「…ッうわぁぁぁああん」

 母さんが死んでから初めて泣いた。あの時になって、ようやく母親が死んじまったことが分かったんだと思う。

 悔しくて、寂しくて、声が枯れるんじゃないかってくらい大声で泣いた。

 その時から、やっと施設の中で友達出来て、自分より小さい奴の面倒も見れるようになって、楽しかった。
 施設長はいつも母さんみたいに優しくて、厳しくて、俺たちをずっと守ってくれてたんだ。
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