1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
「…引いた?」
「え?」
「なんか、変な風に思わせた?」
「…ううん。でも、どうして話してくれたんですか」
神野くんは目を丸くした後、くすっといきなり笑い出しました。
…不気味です。
「晴野は同情しねぇんだな」
「へ?」
「こういう話しすると大体、かわいそうとか言われてた。でも、晴野いきなりなんで話してくれたって聞いてきたから」
「…神野くんは同情されたくないじゃないですか」
「え?」
今度はびっくりされています。神野くんは忙しい方です。
同情されたくない。
だって、私は幸せだから。
神野くんはお母さんの話をするときこそ、辛そうでしたが施設の話は楽しそうだったんです。
そんな人に、かわいそうだねなんて言葉、似合うわけないじゃないですか。
「…やっぱ、晴野変わってるわ」
「貶されてます?」
「うんや。むしろ、褒めてる。…話したのは、自分のこと話してないのに相手に聞くってずるいって思ったから。だから、勝手に話した」