1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
神野くんはすっきりした顔で、机から降りました。
スタスタと私に向かって歩いて来ると、急に手を伸ばしてきました。
その手が、何かの影に重なって見えて思わず目を閉じると、頭に温かい手が乗りました。
…撫でられてます。
「晴野、お前に何があったか、俺は何もわからないけど、でも俺は晴野の味方になりたい」
味方…?
そっと顔を上げると、神野くんは苦笑を浮かべていて、そっと前髪が払われる。
不思議と、私は素顔を見られることを恐れませんでした。
「晴野は自分で気づいてないかもしれないけど、人を惹きつけるんだ。俺も、その1人だから」
「え?」
何を言っているんですか…?
神野くんはそっと手を引っ込めましたが、触れられていた頬はまだ熱いです。
本当に、どうしちゃったんでしょう。今日は本当に不思議な日です。