1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「…帰るか」

「あ、神野くん待って!」

 1人、図書館を出て行こうとした神野くんを慌てて呼び止める。

 立ち上がるときに大きな音がしましたが気にしないことにしましょう。

 神野くんは振り返ると、不思議そうな顔をしています。

 …神野くんになら、話せるかもしれない。私のこと。

「…私のお父さんは嵐鬼の初代総長です」

「は?」

「だから、嵐鬼の皆さんは私を初代の娘…妹みたいに可愛がってくれているだけなんです」

 神野くん、開いたお口がふさがっていませんよ。

 そんなに衝撃的な内容だったんでしょうか…。

 でも、これで驚いていたら私の過去話せますかね…。

 しばらく呆然とした神野くんはいきなりため息を漏らしました。

 む、何故ため息を!
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