1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「お前も、同情されたくねぇって顔だな」

「はい。むしろかわいそうって言ったら嫌いになりますから」

「うわ、それ晴野の前で禁句だな」

 神野くんは冗談めかしく笑い飛ばしてくれます。

 でも、きっとあのことを話せばその表情も変わってしまうかもしれないです。

 それに、私が最も秘密にしたいことはやっぱり、話せる自信はない…。

 でも、なんでこんなにも苦しいんですか…?

「…晴野、一気に話そうって思わなくていいから。嵐鬼との関係だけでも知れたから俺は結構満足してる。まぁ、晴野のこと、もっと知りてぇけどな」

「…はい。でも、聞いてくれますか」

「当たり前。言っただろ、俺はお前の味方になりてぇんだ」

 フッと笑った神野くんに安心しました。
 この人なら、大丈夫。

 嵐鬼以外の人で初めて、そう思えたんです。

「さてと、帰るか」

「はい」

 今度こそ図書館を出て行く神野くんの背に少し駆け足でついて行きます。
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