1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 学校を出ると、感じるいくつかの視線。
 自然と足が重くなる。

 分かってるのに、でも、体は鮮明にまだあの時のことを覚えてる。

「…ッ!?」

「きゃぁああああ!!?」

 いきなり掴まれた手。

 引き寄せられて肩に腕が回されて…え?

 なんで肩を抱かれているんですか!?

「離れんな」

「…歩けます」

「ダメ。朝みたいにさせねぇ」

 離れようとすると離れないように肩を抱く手に力がこもりました。

 でも、神野くんが引き寄せてくれるおかげで足はまた素直に歩きはじめました。

 どうしてでしょう。怖くなった時、お父さん達しか私を引っ張っていけなかったのに、神野くんも私を引っ張って行ってくれます。
 それに、私自身がそのことを嫌がっていない。

 こんなの、初めてで変な気分です。

 そのまま学校を離れて家の方へ歩いて行きます。

 学校を離れても肩に回った手はそのままです…。
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