1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 平然を装って答えると、晴野の表情が突然硬くなる。

 その顔は何かを決意したように、でもそれが怖いと言っているような複雑な表情だった。

 それに、会って欲しい人って誰だ…?

「…会って欲しい人って?」

「まだ言えません。でも、私は私のことをあなたに知ってほしい。だから、会って欲しいんです」

 制服のスカートをきつく握りしめた晴野の表情は、今にも泣きだしてしまいそうなほど切羽詰まったものなのに、目だけは俺に伝えることを決意していた。

 どうして急に?俺が伝えたから?でも、こんなに苦しくさせたいわけじゃねぇのに。

 でも、晴野の思いを踏みにじるのだけはダメだ。

「…分かった。会うよ」

「ッ…ありがとうございます」

 お礼言ってんのに、無理矢理作った笑顔が歪んでる。
 立ち上がった晴野はうつむいて、恐る恐る制服の裾を掴んできた。
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