1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 お父さんにとられたフードを深くかぶり直します。

 公園までの道をゆっくり歩く。

 今から私のしようとしていることは、本当に正しいのかな。
 神野くんを裏切ることにならないかな。

 不意に心の奥で感じた。恐怖。

 月が雲に隠れて月明りを遮る。

 情報屋の私は、神野くんにとって恩人のはず。
 それが、その恩人がこんなにも汚い過去を持った晴野蓬であると知れば、神野くんはどうなるの?
 変わるかは分からないって言われた。でも、ずっと友達だって言ってくれた。


 でも、それは本当に信じてもいいの?


 気づけば目の前に公園があって、急に足がすくみだした。

 どうして?逃げたくない。
 神野くんに会うって約束したのに。

 勝手に手が、足が震える。
 頭の中で引き返せと言葉が繰り返される。

 ねぇ、私は本当にこのまま話してしまってもいいのかな。
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