1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
「…アキ」
「ッ!!?は…ハル?」
ハルしか知らない、神野くんの呼び方。
その声はしっかり神野くんに届いていて。
神野くんはまだ公園の中にいる。ゆっくりと、足を進める。
「なんで、ハルがここに」
「…約束したから」
「…晴野とお前はどんな関係なんだよ。なんで晴野は俺にお前を会せるんだ!?」
混乱しています。
そうですよね。
晴野蓬と情報屋なんて繋がりがあることでさえ疑わない。
やっぱり、言わない方がいいですか?
でも、そしたら私はずっとずるいまま…。
「…神野くん」
「え?」
私は、情報屋としてその場にいる時、声を無意識に低くしてしまうんです。
だから、地声でも神野くんに気づかれることはなかった。でも、今私は晴野蓬の声で神野くんを呼んだ。
神野くんはまさかという顔で、私を凝視してきています。
神野くんを信じよう?
もし、もしそれで傷ついたとしても、いい。そしたら、もう2度と誰も信用しなければいいんだ。
「…は…る…?」
「…神野くん、今まで黙っていてごめんなさい。私は」
フードに手を伸ばす。
そっと、深くかぶっていたフードを脱ぐ。
月が雲の間から顔を出して、私たちを照らす。