1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 神野くんは事態について行けないのか、先ほどからただ目を見開き私を凝視してきています。
 分かっていたこと、でも、私の最大の秘密を明かせたのは神野くんが初めてなんだよ…?

「…本当に、晴野なのか」

「…はい」

「…1個だけ言ってもいいか」

「…はい」

 何を言われても仕方ありません。
 私は神野くんを騙していたんですから。

 神野くんは私に近寄ってくると、手を上げました。

 …私はそんなに神野くんを怒らせてしまったんですね。
 殴られても文句は言えないけど、痛いのやだなぁ…。

 固く目を閉じてうつむく。

 でも、いつまでたっても痛みはやって来ない。

 どうしたんでしょうか…。

 恐る恐る顔を上げると、なぜかびっくり顔の神野くんが…。え?

「…はぁ、晴野。殴んねぇから安心しろ」

「え?あ…」

「…の、代わりに」

「ぷえ?」

 ほっぺた摘ままれました。え?
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