1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「ッ!?痛っ…うにゃ~!?いひゃいでふ!」

 思いっきり引っ張られました。地味に痛いです。
 そして、神野くんはなんでそんな呆れた顔をしているんですか!?

「ひぃっ!?怒りました?」

「怒ってるに決まってんだろ!」

 あう、怒らせるつもりではなかったんです。
 ただ、騙しているのが辛くなったんです。

 ほっぺた引っ張るのはやめてくれました。

 うぅ、神野くんは随分ご立腹の様子です…。

「晴野、お前いい加減にしろ?言う時はいうって言ってからいえ!」

「ふえ?」

「あのな、何の前触れもなく正体明かされても、こっちはどういう反応したらいいのかわかんねぇんだよ。人に会ってくれってなんだ。変装したお前が来ただけじゃねぇか!」

「怒る所はそこですか!?」

「それ以外のどこにあんだよ!!」

 逆に私がびっくりです。
 それに変装した私が来ただけってどういうことですか!?

 本日1番のどでかいため息をついた神野くんは拍子抜けたと私の手を引いてベンチまで行くと、だらしなく座ってしまいました。

 神野くんはどうしちゃったんでしょうか…。
< 198 / 313 >

この作品をシェア

pagetop