1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
「情報屋か!?」
『声がでかい。取引をしたいならこっちを見ないでくれないか。携帯を耳に当てて、柱に背をむけろ』
情報屋のくぐもった声に男は慌てて、指示された通り柱に背を預けてスマホを耳に当てる。
その様子を見た情報屋は小さくため息をついた。
「そ…それで、見つかったんだろうな」
『報酬が先だ。出してもらおうか』
情報が手に入ったのかすら分からないままに、報酬を出せという情報屋に男は怒鳴りそうになった。
だが、情報屋の今にも立ち去ってしまいそうな雰囲気に負けて、手に持ったかばんを情報屋の方に差し出す。
かばんに触れられた感覚がする。しばらくするとその気配は消えて、沈黙が訪れる。
「報酬はそれで全部だ。交渉成立だ。さぁ、早く!」
『10代の心臓提供者。所在はK県。既に話は通した。メールは後で確認しろ。そこに提供者の家族の連絡先を書いておいた。向こうにはあんたの連絡先が伝わっている。今からでもいい。俺と別れたら連絡しな。20時までに連絡すると言っておいたからな』