1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
…でも、中学3年生の時、その幸せを失いました。
「ねぇ、蓬ちゃんって、朔夜様たちと仲いいんだよね?」
「う…うん」
その頃、同じクラスになった女の子。
名前はもう、忘れてしまいましたが仲良くしていた子がいたんです。
今まで、嵐鬼のことをこうやって聞かれることはあったから、普通に答えていました。
智希が4歳、望亜が1歳だったので、家で甘えにくかった私は、頻繁に朔夜さんたちに構ってもらいに行っていました。
「いいなぁ、ねぇ、私も一緒に会いにいっちゃダメ?」
「…ごめん。たまり場に関係ない人は連れて来るなって言われているの。たとえ友達でも、ダメだって」
「…そうなんだ」
「うん」
「…はぁ、本当にうらやましい。ねぇ、蓬ちゃん嵐鬼の人で誰が好き?」
「へ?」
「私、朔夜さん好きなんだ。次の総長候補でしょ?強くて、かっこよくて、本当に理想の人?って感じだよね」
「…そう、かな」
嵐鬼の人たちを異性として見たことのなかった私に、その質問はよく分からなくて、曖昧にしか返せませんでした。
ちょうどその時だったか、高校からたまり場へ向かう途中の朔夜さんたちが通りかかったんです。