1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 毎日呼び出されて、無視すれば暴力だって飛んできた。

 でも、望亜はまだ1歳で忙しいお父さんとお母さんにそんなこと、言えない。

 嵐鬼の皆さんにだって、自分たちのせいで私がいじめられてるなんて知ってたら、傷つく。

 だから、誰にも言わずにずっと耐えてきた。
 どんなに苦しくても、言えなかった。

「ねぇ、私焔さんに抱かれたいんだよね。連絡先知ってるでしょ?教えてよ」

「…嫌です」

「は?」

「嫌だって言ったんです。焔さんはそんな人じゃありません!!」

「はぁ?うっざ。あんた焔さんの女なの?」

「違います!私は誰とも…」

「だったら、口答えすんなよ!!」

 ラブレターやそういった誘いは全て嵐鬼の方は受け付けません。
 一時は持って行ってしまったこともありましたが、皆さんの呆れた顔や苦笑を見ているうちに断るようになっていて、それが更に怒りを呼んだ。

 授業後、空き教室で気を失っていたこともあります。
 持ち物がなくなるなんて当たり前。
 制服ですら破かれたりして、それを必死に隠していました。幸い、裁縫は得意だったので…。

 でも、体の方はそんなに強くなくて、殴られた跡は消えることはありませんでした。
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