1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「なぁ、よもぎちゃんってキミだよね」

 あ、例外がいました。
 私と同じ中学で唯一、櫻高校に通う子。…大宮雷斗くんです。

 雷斗くんは中学生にして、名の上がる不良くんでした。
 そして、私が情報屋をするきっかけとなった人。

「…なんですか」

「俺、嵐鬼に入りたいって思ってんだ。なぁ、入り方教えてくんない?」

「…嫌です」

「やっぱそうだよな。…じゃあ、情報交換なんてどう?」

「…?情報交換、ですか」

「そう、俺は嵐鬼の入り方が知りたい。よもぎちゃんは何が知りたい?」

 はじめは何言ってるんだろうって思ったんです。
 でも、あまりに真剣に話すから、なんか無視できなかったんです。

「…じゃあ、この学年の生徒の情報。主に性格」

「分かった。それ集めたら俺の欲しい情報くれよな!」

 冗談のつもりでした。そんなの無理だって思ったから。
 でも、雷斗くんは本当に集めてきてしまったんです。

 それで、情報が力になることを知りました。

 相手の素の性格が分かったわけですから、私に媚を売ってこようとする人たちを徹底的に排除できるようになったんです。
 情報が自分の身を守ることも出来ることを知りました。
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