1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
優しさ
「私の過去はこれで全部です」
「…晴野」
「…私、バカだったから。分からなかったんです。恨みを買うことも、妬まれるのも何でか全然分からなかった。でも、私は…」
「もういい!…もういいから、だから泣くの我慢すんな。怖かったんだよな。それなのに、無神経に晴野の中に入ろうとしてごめん。ホントに、怖かったよな。辛かったよな。ごめんな」
なんで、神野くんが泣いているんですか?
なんで、泣いてくれるの?
つないだ手が引き寄せられて、抱きしめられる。
神野くんの肩に顔を埋めてしまいました。
「晴野、ありがとう。話してくれてありがとう。怖かったよな。思い出すのだって辛いはずなのに、話させてごめんな」
なんで、そんなこと言ってくれるんですか?
私は…神野くんに知って欲しかったから勝手に言っただけなのに、なのに、神野くんは何で…。
「…泣いていいよ。泣き止むまで、顔見ねぇから」
「…ッ神野くん!」
分かんなくて、ぐちゃぐちゃになった心は泣いても泣いても全然泣き足りなくて。
子どもみたいに大泣きする私を神野くんはずっと抱きしめてくれていました。