1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 お父さんは少し考えると、ちょっと待ってろという言葉と共に携帯でお母さんに連絡を取り始めました。

 神野くんはいよいよ挙動不審になって私の腕を掴んでいます。

「晴野、何考えてんだよ」

「神野くん、よかったらご飯食べて行きなさい」

「えぇ!!?」

 流石お父さんとお母さん。お話が早いですね。

 必死に辞退しようとする神野くんは、最早日本語を話していません。

 なんでそんなに戸惑っているんでしょうか…。

「とにかく寒いだろう。話はいくらでもできるから」

「あ…はい…」

 お父さんの言葉で神野くんは思わず頷いてしまったようです。

 お父さんが先頭を歩き、私と神野くんが並んで歩きます。
 ですが、いつも話してくれる神野くんは完全に無言です。

 緊張しているんでしょうか…。

 家に着くと神野くんの緊張はさらにヒートアップしてしまいました。
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