1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「…雷斗、蓬離せ」

「え?」

「は、よも?」

 流石は朔夜さん。私がいることをしっかりわかっているみたいです。

 雷斗くんは朔夜さんの言葉に、ようやく手を離してくれました。
 あ、手形ばっちりです。

「…雷斗、強く掴み過ぎ」

「あ、ほんとだ!あんた女の子に何やってのよ!」

 すぐに凪さんと輝星さんに保護されてしまいました。
 輝星さんに手首をさすられ、凪さんに頭を撫でられ…。

 相変わらずの過保護であります。

「…雷斗、よもぎちゃんとの約束破ったんですか」

 渉さんの言葉に朔夜さん以外が空気を変えました。

 校内で…人目のつく場所で、私に関わらないでほしい。

 そう、私は嵐鬼の皆さんにお願いしたんです。それは、下っ端さんたちも例外なくでの約束でした。

 でも、HRが終わった直後、雷斗くんと私が一緒に屋上に来たことで、渉さんは見破ったのでしょう。

 雷斗くんは視線を逸らし、黙ったままです。
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