1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「晴野!!」

 急に腕を掴まれ、体が前に行きかけて引き寄せられました。
 振り返れば、少し息を切らした神野くんがいて…。

「どうしたんだよ。てか、その耳…」

「…神野くん、私…」

「…とりあえず、手当てしよう。保健室、行くぞ」

 先ほど、雷斗くんに掴まれていた手首を握られて、神野くんは歩いて行きます。

 さっき、雷斗くんに同じことされたのに、さっきは嫌だって思ったのに、なんで嫌だって思わないんだろう。

 保健室までたどり着くと、先生がいて私たち2人を不思議そうに見つめ返してきました。

「どうしたの?」

「耳、診てやってくれませんか」

「え?…あなたどうしたのこれ!?まさかピアスの針で刺したの?とにかく外して、そこに座って」

 先生は耳から出ている血に驚いて慌てて指示を出してくれます。
 でも、ピアスってどうやって外すんですか…。

「晴野、やろっか」

「…うん」

 神野くんが気付いたのか、すぐに外してくれました。

 先ほどつけられたピアスは私の血で汚れてしまっていて、ちょっと怖いです。
< 243 / 313 >

この作品をシェア

pagetop