1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
「晴野!!」
急に腕を掴まれ、体が前に行きかけて引き寄せられました。
振り返れば、少し息を切らした神野くんがいて…。
「どうしたんだよ。てか、その耳…」
「…神野くん、私…」
「…とりあえず、手当てしよう。保健室、行くぞ」
先ほど、雷斗くんに掴まれていた手首を握られて、神野くんは歩いて行きます。
さっき、雷斗くんに同じことされたのに、さっきは嫌だって思ったのに、なんで嫌だって思わないんだろう。
保健室までたどり着くと、先生がいて私たち2人を不思議そうに見つめ返してきました。
「どうしたの?」
「耳、診てやってくれませんか」
「え?…あなたどうしたのこれ!?まさかピアスの針で刺したの?とにかく外して、そこに座って」
先生は耳から出ている血に驚いて慌てて指示を出してくれます。
でも、ピアスってどうやって外すんですか…。
「晴野、やろっか」
「…うん」
神野くんが気付いたのか、すぐに外してくれました。
先ほどつけられたピアスは私の血で汚れてしまっていて、ちょっと怖いです。