1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「ねーね!!」

「あれ?」

「あ」

 何故だか後ろから可愛い弟の声が。

 振り返ればもちろんそこには智希です。幼稚園の服着ているということは、またお母さん置いてきちゃったみたいですね。

「ともくん、お母さんの手離しちゃダメだよ」

「抱っこ!」

「はいはい」

 両手をいっぱい広げる智希を抱き上げればしがみ付いてきます。

 あれ、なんだかこの雰囲気前も…。

「とも!!」

「お母さん、走っちゃダメだよ!?」

 望亜の手を引いて、お母さんがやってきました。息が上がっている姿に仰天です。
 予定日もあと1か月を切ろうとしているんだからやめてくださいッ。

「あ、よも…。秋空くんも」

「こんちわ。大丈夫ですか」

「うん。ともが走って行っちゃったから追いかけたんだけど…。よも、ごめん荷物いい?」

「お母さんちょっと座って休む?」

「ううん。大丈夫」

 大丈夫という割に顔色があんまりよくないみたいです。

 お母さんが大変なの分っているはずなのに、智希何で走って来ちゃったんでしょうか…。
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