1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
ピアス
智希が先頭に家まで帰ると、とりあえずお母さんはソファで横になってもらい、神野くんは少し招待しました。
もちろん、智希の機嫌は悪いです。
望亜はお母さんにべったりなんです。きっと、心配なんですね。
「…晴野、俺帰るわ」
「あ、でも」
「お母さんしんどそうだし、そいつも俺がいると気張ってるみたいだからな」
「…ごめんね。また明日」
「あぁ、見送りしなくていいから。お邪魔しました」
「あ、ごめんね。荷物運んでもらっちゃって」
「いいですよ。この前のお礼ということで」
神野くんはじゃあなと立ち上がり、玄関へ向かいます。
一応玄関までと思ったんですが、智希がしがみ付いてきたので、諦めました。
「お母さん、夜どうする?わたしやろっか」
「ううん。大丈夫…よも、あんたその耳どうしたの」
「え、あ…これは…」
「ただいま」
「あ、お父さん」
振り返ったらお父さんです。今日は帰りが早かったんですね。
ってあれ、なぜかお父さんの右手に神野くんが捕まっています。