1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 剣人さんにお礼を言って、お父さんの車で家まで戻ります。

 あ、神野くんはまたうちで食べて行きましたよ。
 お父さんが神野くんのこと気に入ったみたいです。

 智希の機嫌はいいとは言えませんが、さっきよりは落ち着いています。

「よも、こっちおいで」

 智希と望亜を寝かしつけてリビングに戻って来ると、お父さんと神野くんが向き合っている席に呼ばれました。
 何となく、神野くんの隣に座ると、お父さんが苦笑しました。なんで?

「2人に似合うピアス探したんだか。どうだ?」

「え?」

 思わずビックリです。まさか病院を抜け出した時についでに買ってきてくれたんでしょうか…。

 神野くんと顔を見合わせ、開けてみると中からきみどり色の宝石のついたピアスが出て来ました。

 なんか高そうです!?

 神野くんの物は赤色の宝石で、色違いみたいです。

「こんな高価な物受け取れませんッ」

 神野くんはすぐに価値を理解したのか、慌ててピアスを袋ごとお父さんに返そうとしますが、お父さんは受け取りません。
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